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Channel: essay –片岡義男.com
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知らぬ町 雨の一日 冬至なり

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クリスマスと5人の娘たち

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あの夜はホワイト・クリスマス

 あの年のクリスマス・イヴには、彼はオートバイで山のなかを走っていた。夜のまだ早い時間に峠道に入り、対向車も後続車もまったくない、彼だけのワインディング・ロードを気分よく走っていた。猛烈に寒いのだが、ときたまオートバイをとめてはエンジンを抱くようにして暖をとりつつ、走った。...

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これがクリスマスの物語

 クリスマス3日前のアメリカ本土に僕は到着した。もっと早くに来る予定でいたのだが、途中のハワイでのんびりし過ぎてしまった。  サンディエーゴの空港に着陸するとき、PAをとおして乗客に挨拶する機長が「良きホリデー・シーズンを過ごされますように」と言ったのをスタートに、クリスマスの当日まで、その年の僕はなぜかほとんどの人から、「メリー・クリスマス」と言われた。...

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課題人生論

 『新しい年を迎えるにあたっての人生訓。生涯を決めるこの一点』というテーマで、2000字の文章をこれから書く。2000字といえば400字詰めの原稿用紙で5枚になる。入学試験や入社試験のときに出題される課題作文ないしは論文だと思って取り組むと面白いのではないかと、いま僕は思いつつある。論文という言いかたは明らかにおおげさだから、課題作文として考えてみることにしよう。...

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プラモデル

 国電の駅を出てから踏切まで、どんなところをどのような経路で歩くのだったか、もう覚えていない。  現場へいって実際に歩いてみれば、思い出すだろう。しかし、あの頃からもうすでに10年以上が経過しているから、現場のほうだってずいぶん変化しているはずだ。...

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サラリーマンという人生の成功

 大学生だった頃、友人たちとのいきがかりのままに、僕はひとつのグループのメンバーになった。友人たちのつながりのなかからいつのまにか発生した、親睦を目的としたごく私的なグループだ。東京都内のいくつかの大学を、横につなぐような集まりだ。いまでも存続している。一年に一度か二度ほど集まり、座敷で宴会をしながら、旧交を温めて話に花を咲かせるのが、もっとも中心的な活動だ。...

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ただそれだけの16年

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日本語で生きるとは

「言語は実用の具であるとともに、人としての尊厳を支えるものである」  と書いた一枚の情報カードを、さきほどから僕は見ている。何年も前、本あるいは雑誌から、書きとめたものだ。僕自身の言葉ではない。ほかにもおなじようなカードが、いま僕のデスクの上に何枚もある。 「日本人の傲慢さは、言葉で関係を作ろうとしないことである。言葉をつくして、双方のために、論理を重ねようとしないことである」...

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僕の肩書は(お利口)としたい

 僕が13歳の頃、小田急線の車両はまだあずき色だった。少なくとも各駅停車の電車は、そうだった。13歳のある日、夕方近く、各駅停車の上りにひとりで乗って、僕は座席にすわっていた。経堂の友だちの家へいった帰りだった。...

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1月1日のこと

 掘りごたつのある部屋へもどって来た彼女は、美しい身のこなしで彼とさしむかいの位置にすわった。  さきほどまでふたりで遊んでいたバックギャモン用のサイコロをふたつ手にとり、テーブルのうえにやさしく転がした。  サイコロはテーブルのうえに音をたてて転がり、すぐに静止した。ふたつとも3の目を出していた。彼女は歓声をあげ、手を叩いた。3のぞろ目、33だ。33は、今年の彼女の年齢だ。...

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[モールスキンの手帳]

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君はいま島へ帰る

 日本というユニークな島に住んでいるぼくたちは、自分たちの国がじつは小さな島々だという事実を、意外に忘れているのではないだろうか。  日本人の島国根性とか、島国で国土がせまいとか、日本の人たちはよく自ら口にするけれど、自分たちの国を、「島」という地理的なとらえかたではっきりと認識している人は、意外にすくないような気がする。  ぼくも、じつは、そのひとりだった。...

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[オリヴェッティのタイプライター]

 自分の心象を可能なかぎり端的にあらわしている写真を撮ろう、ときめて撮ったのが147ページ〔上〕にある写真だ。心象を撮る、それ以外は撮らない、と最初から決定して撮っただけに、これ以上ではあり得ないほどに端的な、きわめてわかりやすい心象風景となっている。ここに僕の心象がある。ここに僕がいる。これは僕だ。...

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システム手帳とはなにか

 システム手帳、という言葉を僕はさきほどから観察している。すっかり日本語になりきった言葉だ。いくら観察しても、もはやなにごとも起きそうにない。しかし、考えていく作業のスタートとしての観察なら、観察する価値はあるような気がする。システムという片仮名語に、手帳という漢字言葉が合体している。このような外観は、本来ならたいそう奇妙なものであるはずだが、誰もなんとも思わない。...

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いきづまりに立ち会う

 世界ぜんたいのいきづまりに立ち会えるとは思わなかった。いずれも世界最高の知性と呼ばれている各国の知識人たちの意見は、ほぼひとつのところにまとまる。どのようなものになるかはまったくわからないが、これまでとはまるで異なる、とてつもなく別なシステムを世界は必要としている、という意見だ。...

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1月1日、消印はモンパルナス

 消印をはっきりと読むことが出来る。1992年1月1日、モンパルナスだ。かつて僕が少しだけともに仕事をしたことのある、いろんな意味でたいへん素敵な女性が、数年前にフランスへ渡り、大学へ通って勉強をしている。その女性が、季節の挨拶の手紙を、何年かぶりで僕に書き送ってくれた。その手紙に貼ってあった一枚の切手とその周辺の、完成された美しさが僕の気持ちをとらえた。...

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正社員という絶滅危惧種

 正社員、という言葉を目にする機会が多いことに、ふと気がつく。人の口から聞くことも多い。街頭で取材中のTVカメラに向かって、「今年卒業ですけど、会社に入るなら正社員を希望しますね、やっぱり」などと、青年が語っている。ほんのちょっと前までは、会社に就職するなら正社員があたりまえ、という時代が長く続いた。正社員ではない雇用のされかたのほうこそ、なんらかの事情のともなう、明らかにやや特殊なことだった。...

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対話をしない人

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僕はわき見をしていたい

 僕は小学生のときは1学年につき2か月ほどしか学校へいっていない。中学生の頃は、学校へいった日数は、3年間の合計で百日あるかないかだ。高等学校になると、だいたい1日おきに登校していた。  学校ではないさまざまな場所に、学校以上に面白いこと、楽しいこと、興味深いことが、たくさん僕を待ちうけていた。それらのところへ寄り道をして遊んでいると、学校へいくための時間はほとんどなかった。...

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